シャーロック・ホームズ 緋色の研究 感想

ネタバレあり

物語が2部構成になっていて、ホームズによる事件解決パートと、犯人による事件とその動機のパート。2つのパートによって一つの事件が描かれているためより深くこの物語を味わうことができる。

犯罪に至るほどの心の描写を直接感じられるのは推理小説ならではかな?
ホームズによる事件解決パートはワトスンによって語られる。だからホームズがワトスンに推理を説明する形となって非常に読みやすい。読みやすいけど、ホームズが推理を説明してくれないと、彼の推理は常人にはわからん。
観察眼を磨けば現実でもあれほどの推理ができるのだろうか。現実的ではないけど不可能とまでは言えないのが少し好奇心をそそる。

あと、今回の事件は読者がいくらがんばっても推理で犯人を見つけ出すのは無理だよな。私怨によるもの、ってとこまで推理できてもどこの誰かはホームズが推理するまで判明していないわけだから。

ここから本格的なネタバレ

ジェファスンは毒の丸薬と毒でない丸薬を使って2分の1の確率で生と死を神様に委ねた。それを殺したいドレッパーとスタンガスンに使用して(スタンガスンは襲ってきたため心臓を刺して殺した)、余ったもう一つを自分で飲んだ。
神が正当な裁きをするならば、自分は生き、お前達が死ぬはずだという主張で。
結果ジェファソンは生き、ドレッパーは死んだ。
ここで一つ疑問。20年間、復讐したい、殺したい、と思っていた相手に対して2分の1の確率を使うなんてあるかな?ジェファスンが信仰深い描写はないし、意志の強さからみても神に頼らず復讐を果たす気がするんだけど。でも両方毒薬で、自分は飲まなかったっていう嘘付くわけはない。別にそれで情状酌量するわけではないし。それを求めているようにも思えない。うん、ありえない。
単純に、こんな理不尽が許されていいはずがないっていう願い、のようなものかな。だからこそ神に裁いて欲しかった。こんな感じのこと本文で言ってるし、結局これが一番しっくりくるな。自分だけでなく、ルーシイの恨みも晴らすために正義が存在することを証明したかったんだろう。
この辺はもう一度読む時にじっくりと考えたい。